Three to Four

毒にも薬にもならない文字の羅列

2022/11/15

すずめの戸締まり

初のIMAXレーザーで見てきた。ここ最近、劇場に行くたびに、その音響と映像の解像感に不満を持っていたので、より高精細&高音質化したIMAXレーザーには大満足。鑑賞料金に追加で500円かかるが、体験の質向上には安すぎる。やっぱりわざわざ劇場に出向く以上は、家庭と同等の高精細を保ったままの大画面、大きいだけじゃなく迫力のある音響を大事にしたい。

新海誠監督最高傑作と銘打たれていた本作。豪語するだけのことはあったように思う。日本列島を縦断するロードムービーでありながら、ヒロイックな冒険活劇。遠く離れたファンタジーのように見えて、私たちの過ごしている現実のすぐ隣にある傷跡。遠く離れた地から、目を背けていた(背けざるをえなかった)ところに帰る、巡礼の物語。からっとさせるエンタメの部分と、日々のかけがえのなさを残酷に突きつけてくる二面性には脱帽させられた。

また、劇伴にも注目したい。「君の名は。」「天気の子」に続いて、本作もRADWIMPSが劇伴を担当しているが、悪くいえば自己主張の激しかった過去2作とは異なり、あくまで“劇伴”で居続け、「すずめの戸締まり」の一員に終始していた。別にあのMVが悪いわけじゃないが、三度も続けるようなことをしなかったのは高く評価したい。また、陣内一真の参加している、みみず戦の曲がすこぶる良かった。不安を煽るメロディーと杉並児童合唱団のコーラスはまさにRPGのボス戦を彷彿とさせる。もはやこの劇伴でゲームしたいまである。ゲーム版「すずめの戸締まり」……、QTEで戸締まりしていくクソADVゲームになりそうだ。

余談。既読の人は即座に連想できると思うが、本作の一部の設定は村上春樹の短編「かえるくん、東京を救う」からきている。実は「輪るピングドラム」がリブートされたことに伴って、今年に入ってから読んでいたので、「すずめの戸締まり」を読んだ(映画の前に小説を読んだ)ときはとても驚いた。こういうふうに、世の中の創作物にはおおよそそれぞれモチーフになったものが存在するので、そうした知識の積み重ねが、より深く体験の色合いを微細にしていくと思うと、ただの娯楽の消費にも邁進が必要だと考えさせられたりもする。